【コロナウイルス感染症】COVID-19を実際に診療してみた感想。COVID-19のなにがやばいのかを解説

世界で大流行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最前線に立っている現場の感覚を交えつつなぜCOVID-19がやばいのか解説します。

プライバシーの問題があり詳細な報告はもちろん書けないのでざっくりとした「感想」が中心になります。

新型コロナウイルス感染症-COVID-19とは-

2019 年 12 月ごろより湖北省武漢市を中心に発生した原因不明の肺炎は新型コロナウイルス (正式にはSARS-CoV-2)が原因とが判明しました。

新型コロナウイルスによる感染症をCOVID-19と呼称します。

ここで気になるのはコロナウイルスは突然あらわれたのか、ということですが実際にはいわゆる「風邪」の10-15%はコロナウイルス(新型とは別種類ですが)が原因として占めていると考えられています。

つまり、コロナウイルス感染症は基本的にそのほかのウイルス性感染症とおなじく単なる「風邪」として広まる可能性もあったわけです。

すくなくとも初期には単なる風邪という認識の医療者もいたような気がします。(別の科の偉い先生が単なる風邪でしょっていってるのを耳にしたような…)

なぜCOVID-19は恐ろしいのか

本来であればCOVID-19もここまで有名にならず、単なる風邪として扱われてもおかしくはなかったはずです。なぜここまで騒がれているのでしょうか。

ポイントは2つあるとおもいます。

一つには無症候患者の存在と感染力が強いこと

実際に診療していると、無症候の患者さんが非常に多いことに気がつきます。

無症候といっても少し咳があったり、微熱があったりるんでしょ?と普通は思うとおもうでしょう。もちろん、よく聞くと「数日ちょっと咳してたかも」とか「1日だけ熱がでた」というケースもありますが本当になんの症状もない方がいます。

無症候の方が診断されるケースの多くは濃厚接触者として検査される場合がおおいと思います。

例えば家族などの発症が確認されて症状はないが同居人も検査してみるというケースです。

現段階でCOVID-19の無症候キャリアがどの程度かははっきりしませんが、これまでの報告(78%が無症候という報告も)からみてもおそらくかなり多いものと思います。 MERSなどは無症候-中等症は20%程度と報告されているのと比較してもかなり多いことがわかります。

現状でPCR検査を大規模に行うことは難しいですし、偽陽性、偽陰性の問題もあります。より正確な数字は抗体検査が広く行われるようになるなどしないと判明しないでしょう。

これだけ無症候の人がいると感染症の封じ込めは難しいです。普通の感染症のように症状の有無によってスクリーニングできません。

実際に診療していてもウイルスは繰り返し陽性でも全く症状がなければ体調も変わらないという方もいますね。このような場合は見分けるのは不可能だと思います。CTでも肺炎像もなければCRPや白血球の上昇(感染症ではあがる場合が多い)がないことが多く、SARS-CoV-2 のPCRや抗体検査をしないかぎりはわかりません。

かなり感染力がつよく無症候の患者さんが感染症を媒介するというのが一つのポイントです。

ここまでは単なる「風邪」とかわりないと思います。COVID-19が恐れられている理由は次のポイントです。

COVID-19は重症化する可能性がある

重症化する場合があって、しかも無視できない程度にいるというのがこのウイルスがこれまでの風邪として処理されてきたそのほかのウイルスと違うところです。

COVID-19では臨床をしているとちょっとした風邪かなという症状でもCTやレントゲンを撮影するとはっきり肺炎像があるということをよく経験します。これは若い人でもよくあります。

普通の風邪で派手な肺炎像を見つけることはあまりないので、重症化するかしなかにかかわらず肺炎になりやすい(特に症状が多少でもある場合)のがCOVID-19の特徴でしょう。

重症化するひとは高齢であったり基礎疾患がある場合が多いというのはよく報道されていますね。しかし 重症化する人しない人を分ける要素ははっきりとはわかっていません。

現場では普通に生活していた人がCOVID-19を発症し、あれよあれよという間に人工呼吸器を必要としたりECMOを必要とするまで悪化する場合を経験します。

人によっては悪くなるスピードが非常に速いケースも遭遇します。

「普通の風邪」でこのような経過を経験することはまずないのですが、COVID-19では稀ではあるけどもそこまで珍しくもないという程度に存在している印象です。

有効な治療法が確立されていないというのも問題です。

いわゆるインフルエンザなどの肺炎は抗インフルエンザ薬を使用したり細菌性肺炎を合併したりすることも多く、通常の細菌性肺炎の治療にも反応することがあるのですがCOVID-19は有効な治療法が開発されないと対応が難しい印象です。

自然とよくなるケースがほとんどなので必要以上に怖がる必要はありませんが、これだけ感染力が強いのに一定の割合で重症化するのは脅威だと思います。

重症化率はまだはっきりしませんが2%ほどという報告があります。無症候性の患者さんの割合や人種差、国の公衆衛生状況などにも影響されると思うので日本でどうなのかはこれからわかってくるでしょう。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版 より引用

COVID-19のこれから

COVID-19は経済的な影響によって感染していない人にも影響を与えています。

早く収束してほしいですね。

現場の感じとしてはCOVID-19の対応には医療者の感染のリスクもあり、かなり神経を使って対応することが求められます。

有効な治療法やワクチン開発、ウイルスのゲノム変異によって感染性が落ちる、ある程度感染が広がって免疫を持った人が増えるなどしないかぎり完全な収束は難しいかもしれません。

しかし感染拡大をマイルドにすることで治療法開発までの時間稼ぎはできます。医療崩壊しない程度の広がりであれば致死率を抑えることができます。感染のスピードが緩まれば日常生活を少しでも取り戻すことができます。

我々にできるのは不要不急の外出や面会を控えてこれ以上急速に感染を拡大させないということにつきると思います。

参考文献

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版

BMJ 2020;369:m1375 doi: 10.1136/bmj.m1375 (Published 2 April 2020)

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)-The Kingdom of Saudi Arabia
Disease Outbreak News: Update  17 May 2019

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内科の医師をしておりますドクトルめがねです。最近は研究にも足を踏み入れてしまいました。 学びを言語化する場としてブログを書いています。内科医の夫(ドクトルめがね)と外科医の嫁(よめぽん)の奮闘劇漫画も随時アップしていきます。

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