【新型コロナウイルス】武漢における妊婦のCOVID-19の報告

  • 2020年4月20日
  • 2020年5月3日
  • コラム
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COVID-19の武漢における妊婦への感染のケースシリーズが報告されいたので紹介してみたいと思います。

Letter to the editor という形での報告です

本文の翻訳をしてみましょう。本文が気になる方は NEMJの
Clinical Characteristics of Pregnant Women with Covid-19 in Wuhan, China をチェックしてください。

新型コロナウイルス(Covid-19)の症例数が大量にそして急速に増加し、死亡者数が増加しているにもかかわらず、感染した妊婦の臨床的データは限られています。”Covid-19 “を有する妊婦の疫学的特徴、臨床的特徴、検査的特徴、放射線学的特徴、治療、転帰に関する情報を武漢市内の50の指定病院すべてのカルテを保管する中国国家衛生委員会のシステムを通じて抽出しました。

2019年12月8日から2020年3月20日までの間に、COVID-19肺炎の我が国での指針の基準に従って武漢でCOVID-19を有する妊婦118人を同定しました。84人の女性(71%)は新型コロナウイルスのPCR検査が陽性であり、残りの34人(29%)は胸部のCT(コンピュータ断層撮影)で示唆的な所見を有していました。軽症、重症、重症の基準およびその他の方法論の詳細は、NEJM.orgの本文の全文と一緒に入手可能な  Supplementary Appendix に記載されています。妊娠中の患者は、この期間にこれらの病院で報告された COVID-19 の患者全体の 0.24%を占めていました。

118 人の女性のうち 109 人(92%)が軽症、9 人(8%)が重症(低酸素血症)で、そのうち 1 人が非侵襲的機械換気(重症)を受けていました。重症化したのは9人中6人で、非侵襲的機械換気を受けた女性は出産後に発症しました。3月20日現在、重症または重症の女性を含む116人中109人(94%)が退院していました。死亡例はありません。

研究対象者のうち、自然流産は 3 件、子宮外妊娠は 2 件、誘発流産は 4 件でした。(いずれも COVID-19 に対する患者の懸念によるもの)。期間中に分娩した患者は 118 人中 68 人(58%)で、武漢での全分娩の 0.56%を占め、70 件の出産(2 組の双子)を経験しました。これら 68 例のうち 63 例(93%)が帝王切開を受け、62 例中 38 例(61%)では、COVID-19 の妊娠への影響を懸念して帝王切開を行っています。合計14例(21%)が早産、8例が誘発分娩でした(7例はCOVID-19に対する懸念によるもの)。新生児窒息症を起こした新生児はいませんでした。

SARS-CoV-2 の検査は、8 人の新生児の咽頭スワブと 3 人の母親の母乳サンプルを対象に実施されました。陽性結果は報告されていません。


妊娠中の集団における重症化リスク(8%)は、中国大陸全域で報告されている COVID-19 患者の一般集団における重症化リスク(15.7%)と比較して良好でした。今回のデータは、インフルエンザで観察されたような妊婦の重症化リスクの増加を示唆するものではありません。産後の女性に観察される呼吸器疾患の増悪は、この時期に起こる生理学的変化(例えば、循環血液量の増加)に関連していると考えられます。

妊婦・胎児への影響はそこまで大きくないかもしれないが気になる点もある

この報告では妊婦への影響は恐れるほど大きなない印象を受けます。一般的に集団とくらべても重症化リスクは8% vs 15.7%と悪くはないように見えます。

しかしいくつか疑問は残ります。

妊婦側でいえばまず同年齢の非妊娠している場合とくらべても重症化しにくいのかという点はわかっていません。

安全策だとは思いますが9割の割合で帝王切開をしています。

胎児への影響でいうと

流産などが劇的に増えるというわけではなさそうだが週数と感染の時期による関係が不明です。

何週以降なら大丈夫とかそういうことはまだわかっていません。

特に器官形成期の胎児などはまだ時期的にも出産は先になるため影響の解析はすぐには難しいでしょう。

垂直感染も今のところ確認されていませんね。

あえてや誘発分娩、流産を選んだ人たちの詳細は気になります。

何か医学的な問題があってのことなのか、そっちが安全と考えただけなのか、この理由によっては解釈も変わりそうです。

この少ない情報から読み取れることは今のところ妊婦がCOVID-19を過度に恐れるほどの報告はなさそうです(とくに妊娠後期)。

ただかなり割合が帝王切開なのでそこのバイアスは大きいですね。通常分娩の場合はどうなのか(垂直感染含めて)、データが欲しいですね。(さまざまな安全面や感染防御面を考慮すると帝王切開を選択する施設が多くなりそうですがどうでしょう)

本当のところはまだよくわからない部分が多いので慎重に情報を集めたほうがよいでしょう。

新しい知見があったら発信していきたいですね。

参考文献

Clinical Characteristics of Pregnant Women with Covid-19 in Wuhan, China NEMJ April 17, 2020 DOI: 10.1056/NEJMc2009226

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内科の医師をしておりますドクトルめがねです。最近は研究にも足を踏み入れてしまいました。 学びを言語化する場としてブログを書いています。内科医の夫(ドクトルめがね)と外科医の嫁(よめぽん)の奮闘劇漫画も随時アップしていきます。

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