【医師国家試験第113回D40・リウマチ膠原病内科】高齢者の発熱の鑑別はつねに〇〇を考えろ

78 歳の女性。発熱と頸部痛を主訴に来院した。4週間前に39.0 ℃の発熱、右足関節部に腫脹、疼痛が出現した。数日で右足関節部の症状は改善し、解熱した。5日前から再び発熱し、頸部痛が出現したため受診した。体温38.4 ℃。脈拍104/ 分、整。血圧 134/74mmHg 。呼吸数 18/ 分。 SpO₂ 97 % (room air) 。頸部は疼痛による可動域制限がある。四肢関節に腫脹、圧痛を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。尿所見に異常を認めない。赤沈 110 mm/ 1時間。血液所見:赤血球385 万、 Hb 10.8g/dL 、Ht40% 、白血球9,800(好中球82% 、単球 6%、リンパ球12%) 、血小板52万。血液生化学所見:総蛋白 6.3 g/dL 、アルブミン 3.0 g/dL 、総ビリルビン0.8 mg/dL 、AST 12U/L 、ALT 14 U/L 、LD 264 U/L (基準 176~353) 、尿素窒素19 mg/dL 、クレアチニン 0.5mg/dL 、CRP 18 mg/dL。脳脊髄液検査に異常を認めない。頸部 CTの矢状断像および水平断像(別冊No. 14) を別に示す。
最も考えられるのはどれか。
a Behçet病
b 結核性脊椎炎
c 関節リウマチ
d 後縦靱帯骨化症
e 結晶誘発性関節炎

医師国家試験第113回D40より引用
別冊No.14

高齢者の発熱は常に偽痛風を鑑別に入れるべし

高齢者の単関節炎+発熱の場合には化膿性関節炎などはもちろんのこと常に偽痛風は鑑別として考える必要があります。

発熱が主訴できてもよくよく病歴を聴くと関節が痛いとか腫脹があったりするので注意が必要です。

その中でも診断が比較的難しいCrown Dens Syndromeの可能性はつねに考えなくてはいけません。

Crown Dens Syndromeとは

環軸椎関節にピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)などが沈着して起こる偽痛風の一種。NSAIDsの使用のみで軽快します。高齢者に多く、頚部痛を認めます。CRPとWBCの上昇と発熱もあるため感染症と間違われることも多いです。

偽痛風は結晶誘発性関節炎と覚えよう

a Behçet病

ぶどう膜炎、口腔内粘膜のアフタ性潰瘍、結節性紅斑などの皮膚症状、外陰部潰瘍を主症状とする疾患です。この症例ではどの主症状も当てはまりそうにないですね。

b 結核性脊椎炎

腰痛などの症状が中心となるはずなので経過から考えにくく、画像的にも結核による肉芽腫の形成や椎間板の破壊がないですね。

c 関節リウマチ

関節リウマチの増悪の可能性を考えることは大事だと思いますが、これまで多関節炎が基本であり四肢に腫脹がないという症状は鑑別としてかなり下位にさがります。自己抗体や画像所見含めて関節リウマチを示唆する検査所見はありません。

d 後縦靱帯骨化症

後縦靱帯が骨化し脊髄を圧迫してしまうことで痺れなどの症状が出ます。骨化している部位が全然違いますね。

e 結晶誘発性関節炎

正解。

CPPDの沈着で誘発される関節炎ということで、名前の通りです。

救急外来でも高齢者の発熱を見たら常に鑑別に考えなくてはいけませんね。

Crown Dens syndromeは四肢に腫脹など無いため一見するとフォーカス不明の発熱として扱われやすく注意が必要です。

参考文献 

膠原病診療ノート(第4版) 日本医事新報社

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内科の医師をしておりますドクトルめがねです。最近は研究にも足を踏み入れてしまいました。 学びを言語化する場としてブログを書いています。内科医の夫(ドクトルめがね)と外科医の嫁(よめぽん)の奮闘劇漫画も随時アップしていきます。

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