膜性腎症はネフローゼ症候群の原因となり、壮年期から高齢者にかけて発症が増えることでよく知られています。
日本での標準治療はステロイドやCyAを用いた治療ですが海外ではTACやシクロフォスファミドなどがよく用いられようです。
今回はMMFとTACのコンビネーションセラピーを取り扱った論文を紹介してみたいと思います。
BMC NephrologyよりMycophenolate mofetil and tacrolimus versus tacrolimus alone for the treatment of idiopathic membranous glomerulonephritis: a randomised
controlled trial という論文を読んでみます。
論文はBMC Nephrology でIFは2点ほどのオープンアクセス誌になりますね。
膜性腎症の多くはanti-PLA2Rという抗体が原因と考えられていることからB細胞の増殖や抗体生産を抑制するMMFの効果に注目してこの研究を組んだようです。
研究デザイン
TACは血中濃度5-12ng/ml、MMFはMPA 1.5-3.0mg/Lになるようにコントロールしていたようです。
12か月寛解維持をしたところでMMFは中止されTACは6か月かけて減量しています。
10年ぶりの再発の人以外は初発の40人が組み込まれた単施設でのRCTとなります。
患者背景
とくに大きな差は無いようです。ロンドンのインペリアルカレッジでの研究にもかかわらずアジア人の比率が多いですね。
寛解率 TAC vs TAC+MMF
TACとTAC+MMFを比べるとTAC+MMFのほうが寛解率はよさそうですが有意差はでていません。
再発率 TAC vs TAC+MMF
再発までの期間や再発率に関しても両者で有意差はでませんでした。
アルブミンの上昇や蛋白尿の低下はTAC+MMFのほうがわずかに早く、これも有意差はでていないもののMMFを加えたほうが寛解までの期間は短いかもしれませんね。
TAC 54 Weeksに対してTAC+MMFは49 Weeksとなっている。
副作用の差はいかほど
で特にTAC+MMFのほうが副作用が増えたということは無いようです。本来ならばTAC単独のほうが副作用が少なく済むはずですがTAC単独のほうが副作用がやや多いような印象を受けるのは気になるところですね。
再発に差はなかったという残念な結果。
結論としては本来の目的である再発を抑制するという点では差は無かったという残念な結果です。
観察期間や単施設のRCTとしてはなかなか頑張った方だとは思いますが難しいですね。薬をやめたあとの再発を抑えるのは結構難しい課題だと思います。
寛解率や寛解に至るまでの期間は短くなる可能性が示唆されています!
MMFを加えることで寛解までの期間が短くなる可能性や寛解率が上がる可能性が示唆されたことは評価できると思います。
N数が足りずに統計学的な有意差はつきませんでしたが、今度は難治症例を対象にMMFの併用療法の有意性を証明できれば膜性腎症の治療の大きな一歩となりますしね。
ただただ失敗な研究かというとそんなことは無いでしょう。
今後に期待です!
参考文献
Mycophenolate mofetil and tacrolimus versus tacrolimus alone for the treatment of idiopathic membranous glomerulonephritis: a randomised
controlled trial
Nikolopoulou et al. BMC Nephrology (2019) 20:352