外傷患者で診断を確定するために、単純CTに造影CTを追加することが最も有用なのはどれか。
a 気 胸b 脳挫傷
c 脾損傷
d 肋骨骨折
e びまん性軸索損傷
第113回医師国家試験F29
救急外来で必ず出会うであろう外傷患者のマネージメントについての問題ですね。
外傷における造影CTは主に出血源の精査のために行います。
選択肢の中で出血する可能性が高くそれが致死的な出血となり得るのはcの脾損傷になります。
脾損傷は造影CT所見で治療方針が変わる
脾臓は腹腔内の臓器なのでもし出血がひどい場合は腹腔内に大量に出血してしまい出血性ショックの原因となります。
このように血腫の大きさや出血の程度によって次に血管内治療を行うか、開腹術まで念頭に置くか、あるいは保存的に安静のみで経過観察するかという方針が大まかに分かれることになります。
腎機能が悪いとか造影剤アレルギーがあるという場合でなければ積極的に造影CTを撮影して今後の治療方針に役立てていく必要があります。
外傷患者でよく出会う合併症
他の選択肢も外傷の患者さんではよく見かける合併症になりますがひとつひとつ検討します。
a 気 胸
これが血胸を伴う場合であれば造影CTを積極的に考慮すべきですが、気胸だけであれば出血しているわけではないので単純CTで十分です。
単純CTで胸腔内に体液の貯留があれば血胸の可能性も考えて造影CTを検討してもよいでしょう。
b 脳挫傷
脳挫傷に脳出血を伴うことはありえます。
頭蓋内は閉鎖空間なので出血性ショックをきたすことはありませんが、脳圧の亢進によって脳ヘルニアなどをきたすことはあるでしょう。
場合によっては外科的な血腫の除去や減圧術を検討することになりますが基本的には閉鎖空間なので自然と止血されるのを待つことになり、造影CTによる出血源の評価というのはあまり意味をなしません。
出血があった場合でも血腫の大きさは単純CTで十分評価できます。
内因性のクモ膜下出血(SAH)などで動脈瘤検索のためにCTA(CTアンギオ)を行うことはありえるでしょう。
c 脾損傷
正解ですね。
d 肋骨骨折
肋骨骨折に皮下血腫や血胸などを伴っていれば造影CTで活動性の出血が無いかの評価はしてもよいと思われますが通常の肋骨骨折ではいらないでしょう。
e びまん性軸索損傷
びまん性軸索損傷(DAI、diffuse axonal injury)は脳実質に回転性の力が加わった時に生じる神経線維の断裂を原因とした脳損傷と考えられています。
外傷で脳実質に力が加わった時にぱっと見ても変化はないけどじつはダメージがあるという感じですね。
したがって形態変化はあまりないのでCTのみで評価は困難です。評価の方法としてはMRIとなります。T2強調画像やFLAIRの高信号が特徴とされています。
この画像のようにFRAIRで高信号域を認めます
受傷直後からの意識レベルの低下があればDAIも疑ってMRIも積極的に評価していきましょう。
参考文献
日本腹部救急医学会雑誌Vol. 32(7)2012
よくわかる脳MRI 第3版 秀潤社