【国試の解説・腎臓・医師国家試験第113回F51】慢性腎臓病(CKD)の食事制限を見直そう!


70歳の男性。下腿の浮腫を主訴に来院した。 30年前から健診で尿蛋白と尿潜血を指摘されていた。 3年前から腎臓が悪いことを指摘されていたが医療機関を受診しなかった。 3か月前から下腿に浮腫を自覚するようになったため受診した。身長165cm、体重 60kg。脈拍 92/分、整。血圧 186/100mmHg。両下腿に浮腫を認める。尿所見:蛋白 3+、糖(-)、潜血 2+、沈渣に多彩な変形赤血球と顆粒円柱を認める。随時尿の尿蛋白/クレアチニン比は 2.5g/gクレアチニン (基準 0.15未満)。血液所見:赤血球 356万、 Hb 10.8 g/dL、Ht 32%、白血球 7,800、血小板20万。血液生化学所見:総蛋白 6.5g/dL、アルブミン 3.0g/dL、尿素窒素 20mg/dL、クレアチニン 1.6mg/dL、eGFR34mL/分/1.73m²、Na138mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl104 mEq/L。


適切な食事指導はどれか。


a 高蛋白食


b 多量の水分摂取


c カリウム摂取制限


d 1日10gの塩分制限


e 1日25~35kcal/kgのエネルギー摂取


出典 医師国家試験 第113回F51 より

患者さんはどんな人なのか

尿潜血や蛋白尿があり、既往に糖尿病などが書かれていないことから腎障害の原疾患は糸球体腎炎と考えてよさそうですね。

血尿があることや年齢、進行のスピードなどからおそらくIgA腎症をモデルにしているのかなと思います。もちろん高血圧も腎障害の進展の因子となっていると思われるので治療が必要だと考えていきます。

原疾患はともかくこの問題が言いたいのは慢性腎臓病の食事制限が理解できていますかということでしょう。回答にたどり着くのは消去法を使えば容易い印象。

慢性腎臓病の食事制限の基本がわかれば簡単

a 高蛋白食

高蛋白食はだめです。腎障害があるのでただでさえ老廃物の排出が大変なのに蛋白負荷をしたらその分腎臓は頑張って老廃物を排泄しなければいけなので大変。


b 多量の水分摂取

浮腫んでいる人に水分摂取を促すのはナンセンスでしょ。

たださえ糸球体濾過量が減って濃縮能も下がっているのに余分に水分をとっても尿として排出できるのは限界がありますね。

c カリウム摂取制限

摂取したカリウムの9割近くは尿から排泄されるためCKDの患者さんはカリウム制限が必要になることがあります。

カリウム制限はG3bから考え出してもよいので完全に間違いとは言えませんが、血清カリウム値が問題ないのであれば今すぐに制限する必要はないです。

この症例はカリウムは問題なさそうなのであえてカリウムを食事制限はしません。

正直カリウムの摂取量と排泄量のバランスは人それぞれなので個別に日々指導していくしかないのが実情ですね。

d 1日10gの塩分制限

塩分は6gが基本です。高血圧症もあり塩分制限は厳格なほうが良いです。

e 1日25~35kcal/kgのエネルギー摂取

これが正解。腎臓病は蛋白を制限しつつカロリーをしっかりとらなければならないというのがこの問題の本質ですね。

慢性腎臓病の高齢者が増えてからは特にサルコペニアが問題になっていて、例えば蛋白制限によって特に高齢者は摂取する栄養が減って逆によくないという意見もあります。

理想的にはなるべく無駄を省きつつ必要なカロリーと栄養は取りましょうという話なのだけど現実はそんなにうまくいかないので患者さん個人個人に合わせて日々調整が必要な一番難しい部分だったりします。

参考文献

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018

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内科の医師をしておりますドクトルめがねです。最近は研究にも足を踏み入れてしまいました。 学びを言語化する場としてブログを書いています。内科医の夫(ドクトルめがね)と外科医の嫁(よめぽん)の奮闘劇漫画も随時アップしていきます。

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