私はあまり恩恵にあずかっていませんが、最近の育毛事情というのも面白そうなので時折調べて皆様に伝えていきたいと思います。今回はタイトルが目にとまった論文を紹介してみます。
International Journal of Trichology からの引用です。
この雑誌はどうやらインドの育毛関連のオープンアクセス誌のようです。
ちなみにtrichologyというのは毛髪学という意味です。
育毛業界に詳しくないのでこの雑誌がどういうものか私はよく知りません。
“A Study to Compare the Efficacy of Platelet-rich Plasma and Minoxidil Therapy for the Treatment of Androgenetic Alopecia”
Int J Trichology. 2019 Mar-Apr.11(2):68-79
今回紹介するのはこの論文です。これから出てくる画像はこの論文より引用しています。
ミノキシジルとPlatelet-rich Plasma(PRP)治療を比較してみましたよ
というタイトルです。
ミノキシジルはかの有名なリアップなどに含まれている成分ですね。皮膚科学会も推奨する育毛製剤で、日本では外用薬として承認されています。ミノキシジルなら私も知ってますよ。この論文でもミノキシジルは外用薬での使用となっています。
PRP療法とは
一方でこのPRP療法って何でしょう。あまり耳慣れない単語ですね。ここが気になったのでちょっと読んでみる気になりました。
直訳すると多血小板血漿とでもなりますか。調べてみると、美容・スポーツ業界で使われる治療法になります。いくつかの方法があるようですが、いわゆる輸血で使うような濃縮血小板ではなく、多くの場合は患者本人から採血して遠心分離して血小板が豊富に含まれている血漿の層を採取して使うようです。つまり自分の血小板(と血漿成分の一部)を抽出して使うことになります。
血小板や血漿成分に含まれるあるいは誘導・放出する成長因子などによる自己治癒力に期待するという発想の治療法です。
さっそく研究の中身を吟味していきましょう。
研究の中身を見ていこう PRP vs ミノキシジル
この研究ではAGAの被験者40人をGroup A(PRP療法)とGroup B(ミノキシジル外用療法)に被験者を2群に20人づつ振り分けて治療し、6か月観察してみたようです。
つまりすでにエビデンスのあるミノキシジルとくらべてPRP療法はどうなのかということを検証していきたいのでしょう。ワクワクしてきましたね。毎日塗るよりたまに注射するだけのほうが楽な気がしますし、それで効果抜群ならいうことはありません。
グループAはPRPを1か月おきに4か月にわたって頭皮に注入します。グループBは5%ミノキシジルを1mlを1日2回6か月間頭に毎日塗ります。
PRPは被験者の血液を遠心分離機に二回ほどかけて作るようです。作り方はシンプルなので道具さえあれば私でも作れそうです。遠心分離機は非常に高価ですが。
勝者はどちらなのか!衝撃の結果
グループAは痛みのために4人離脱してしまったそうです。やはり痛いのですね。
なんとグループBは効果が感じられないと6人も離脱してしまったそうです。そんな自由な感じもありなのか。だいぶ結果に影響を与えてしまいそうで行先不安です。
評価方法は頭皮全体の写真、negative hair pull test、満足度アンケートです。
Negative hair pull testという鬼門
Negative hair pull testというのは親指、人差し指、中指で髪の毛をつまみ、そのうちの6本以下あるいは10%未満のみしか毛髪が抜けなればnegativeだという検査のようです。よくわかりませんが抜けない髪の毛は健康だということなのでしょうか。そもそも禿げていたら髪の毛つまめるのでしょうか。髪の毛をつまむ部位でも抜け毛の本数は変わりそうですが。力の入れ具合はきっと均一に違いないのですよね。
なんか読むのが疲れてきましたよ。
では結果を見てみましょう。
まずは画像からBefore⇒Afterになります。
筆者らはこれらの画像からGroupAのPRP群のほうがよく改善していると述べています。
(画像が荒くてすいません、無料で読めるので原著をみたらもっときれいな画像です)
どこからつっこんだらいいのかわかりません。
写真撮る条件がいくらなんでも違いすぎやしませんか。私の好みからすれば背景、服装くらいは揃えたいところです。照明とか角度とかも微妙に違うし、髪型も違うし、なんかbeforeにすごいテカテカの人いません?シャンプーしたてとかそこら辺でだいぶ印象かわると思いますよ。
そして、negative hair pull testではGroup A 75%に対してGroup B 42.8%と統計学的有意差はつかなかったもののGroup Aが優れていたそうです。
統計学的有意差の前にこのテストの実施者によるバイアスはどうするのでしょうか。髪の毛を引っ張る人の好みがだいぶ反映されてしまいそうです。
最後にアンケートはGroup Aで満足度が高かったみたいです。
それはよかったですね。
本当の勝者は、誰?
筆者らは今回の研究ではすべての面においてGroup Aが優れており、PRP療法はミノキシジル外用にくらべて優位性があるかもしれないと結論づけています。
最後のほうはかなり読むのがしんどかったですが、内容は面白かったのでよしとしましょう。
正直なところ真面目につっこんだら負けなのかもしれません。将来的な可能性はまだわかりませんがPRP療法が従来のミノキシジル外用に勝ると言い切るにはだいぶ押しが弱い内容のように思えます。好意的にとらえるならミノキシジルのほうは効果がないといって脱落した人が多いので満足度は高く出そうなバイアスがかかっていそうなものです。PRP療法はそのような不利な条件で満足度でその上をいくかもしれないということくらいでしょうか。
ふさふさへの道のりは遠い
論文として発表されていても内容は吟味しないとわかりませんね。正直論文の内容は有名雑誌でもつっこみどころ満載でなぜ査読に通ったのかわからないものはよくあります。
例えばこの論文だけを引用して、PRP療法はミノキシジルより効果があることが証明されているなんて書いてあったら、論文まで引用していて信頼できる情報だな信頼してしまいそうですね。情報をどう扱うのか考えさせられます。
PRP療法とか聞きなれないから、ついにふさふさになる新療法が開発されたのか!と期待した私があほでした。
もちろん、AGAに対するPRP療法を否定するつもりは全くなくてあくまでこの論文の内容だけを議論しています。論文に対する意見はあくまで私の感想なので、特段非難しようという気は毛髪だけに毛頭ありません。気になる方は原著をチェックしてみて下さいね。