中咽頭がんとHPV
HPVは子宮頸がん予防ワクチンと呼ばれますが、実はHPVはその他のがんの原因にもなりえることをご存知でしょうか。
現時点ではワクチンは高価であり費用対効果の面からHPVワクチンは子宮頸がんを対象としていますがその可能性はもっと大きいものです。
HPVと中咽頭がんについて見てみます。
中咽頭がんの中にはHPV感染と関連したものがあります。
HPVは性交渉で感染し子宮頸がんの原因となりますが、オーラルセックスによって口腔内にも感染し中咽頭がんのリスクになることも知られています。
今回紹介するのはワクチン接種によって咽頭へのHPV感染を減少させ、ひいては中咽頭がんのリスクを減少させられるかもしれないという論文です。
※中咽頭がんの原因としてはHPV16が最も多いといわれており、これは既存のHPVワクチンで防げるタイプです。
JAMA NetworkよりRisk of Oral Human Papilloma virus Infection Among Sexually Active Female Adolescents Receiving the Quadrivalent Vaccineという論文を紹介します。
4価HPVワクチンを接種することで口腔内のHPV感染は減らせるのか
研究デザイン
対象となったのは13歳から21歳までの女性で口腔内、子宮頸、肛門よりサンプルを採取しています。
研究対象の背景
オーラルセックスの92%と頻度は高いですね。
がんに関連するHPVの割合
口腔内よりがんに関連するHPVは年齢16歳以上で検出されています。
口腔内のHPV感染の因子
オーラルセックスの有無では口腔内HPV感染のリスクに有意差はありませんでした。
性交の年数が増えるほど口腔内HPVの検出は高くなる
ワクチン接種により4価ワクチンでカバーされるHPV感染は減少した。
がんと関連するHPVの一部ですが少なくともワクチンを接種すればワクチンでカバーできるHPV(HPV-6, HPV-11, HPV-16, and HPV-18)の感染は減らせます。
HPV-16がもっともHPV関連の中咽頭がんの頻度が高いです。
HPV-16だけでみるとワクチン接種群1/1097vs非ワクチン接種群2/192と有意差はつかなかったもののやはり感染は少ない傾向にあります。
長期間感染が継続する割合は少ない
口腔内からHPVが検出されても多くの場合は12か月以内に検出されなくなります。
したがってワクチン接種をしなくても多くの場合は自然に消えるかもしれません。
2例はがんに関連するHPVの持続的な感染を認めたそうです。
持続的な感染は将来的な発がんにつながる可能性があります。
とはいえ持続感染する可能性は高くなく、有用性を証明するにはもっと大規模な人数や性差を超えた研究が必要かもしれません。
HPVワクチンの接種は子宮頸がんの予防だけにとどまらない
HPVが子宮頸がんだけではなくて中咽頭がんや肛門がんなどのリスクになることは知られています。
この論文では直接的にはHPVワクチンが中咽頭がんを減らせることを証明はできていません。
しかしワクチン接種によって一時的な感染を防げる可能性は示せたように思います。
ごく一部では持続的な感染につながっており、大規模かつ長期に渡って観察すれば有意差は出てくるかもしれません。
参考文献
JAMA Network Open. 2019;2(10):e1914031. doi:10.1001/jamanetworkopen.2019.14031