重症患者の管理において意識障害や人工呼吸器の使用などさまざまな理由から栄養の投与経路として胃管などの経管栄養を避けられない場合があります。
経管栄養を使う場合によく問題になるのは下痢などの経腸栄養への不耐性による症状です。
経腸栄養の不耐性に対して食物繊維が有効かもしれないという論文を紹介します。
今回紹介するのはAsia Pac J Clin Nutrというimpact factorは1.3程度の雑誌から「Enteral nutrition preference in critical care: fibre-enriched or fibre-free?」という論文になります。
食物繊維は経管栄養の下痢などを減らせるのか
研究の方法
単施設でICU入室後の48時間以内にfeeding tubeによる経腸栄養を対象とした前向きランダム化比較試験となります。
循環動態が不安定な患者や、Sepsis、消化管に問題のある患者は除外されています。
患者間での差はあまりありません。
食物繊維の効果はいかほど
結果を見ていきましょう。
GRV= gastric residual volumeは胃の残渣がどれほどかという指標です。
GRVには有意差はなく、経管栄養を増やしていったときに残渣が問題になる場合には食物繊維はあまり効果がないかもしれません。
gastrointestinal complicationsは腹部膨満、嘔吐、逆流、便秘の症状を評価しています。
Daily volume rateは予想量の何パーセントを投与できたかの指標になります。
腹部症状がある場合は必要量を投与できていないということがわかります。
食物繊維を含有したほうがより多めの栄養を投与できている印象ですが有意差はついていません。
食物繊維は下痢をへらすかもしれない
嘔吐や逆流のどの症状に関してはあまり差がなかった一方でdiarrhoea(=下痢)に関しては有意差をもって食物繊維を投与したグループで改善しています。
初日よりも5日目で有意差がついており徐々に効いてくるという感じでしょうか。
経腸栄養を開始したときに下痢に悩まされることがあります。
重症の患者さんほど必要なカロリー量が増えていて何とか栄養の投与量を上げたいと思いますが、実際には下痢や逆流などのトラブルでなかなか必要な量の栄養を投与できないで困ることがあります。
末梢血管を使った静脈栄養には限度がありますし静脈炎のリスクがあったり心不全で溢水の場合などには投与水分量が多くなってしまうなど障壁があります。
CVカテーテルを使った高カロリー輸液は感染のリスクもあり、可能なら経腸栄養を行いたいところです。
まとめ
下痢の場合は経管栄養の投与速度を減らしたり整腸剤を投与したりとさまざまな方法をとりますが、下痢に悩まされているときは食物繊維含有の栄養剤を使うか、食物繊維の豊富な製剤を併用するというのも一つの方法かもしれないということになります。
食物繊維を投与するための製剤は市販されているので経腸栄養で下痢に悩まされるときはこれらの商品を一考することも検討してよいでしょう。
参考文献
Asia Pac J Clin Nutr 2016;25(4):740-746